この記事を書いた人 イタリア人の夫を持つ在伊日本人妻。イタリアにて女の子を出産 在伊歴は5年程経つが、いまだにイタリア語初心者(!) イタリアで日本人の為の情報を探すのは本当に大変・・・ というわけで忘備録を兼ねたイタリア生活情報を発信していきます。 | サトウ |
出産は人生の中でも大きなライフイベントの一つだが、海外在住者にとっても難しい選択の一つである。
これは私が2021年コロナ下、イタリアで女の子を出産した時の体験談である。
私は無事に出産すること以外には特にこれといったこだわりがなかった為、イタリアで出産する事に決めたのだが、
コロナ下ということもあり、たとえ日本で出産したくても状況的には不可能であったと思われる。
日頃から健康で、特に心配をしていなかったのが大きな決め手だが、日頃からの怠慢であるイタリア語初心者というのが、大きなハードルとなったのは言うまでもない。
それは出産日から4日前・・・
出産予定日より1週間程早い日の深夜3時、軽い尿漏れ?これが俗に言う破水か?という少量の液体が出て、まぁよく分からないから朝になったら病院に行こうと再度就寝、深夜4時にこれは確実に破水だろうと分かる量の液体が出たので自家用車で病院に向かう。
実はこの前日に最近は無くなっていたつわりが急にひどくなり、確実にホルモンの分泌が変わったな、という感覚があったので、ぼんやりと準備していたので助かった。意外と分かるもんだなぁ、と自分の体ながら感心である。
病院に着くと(午前4時)産婦人科まで車いすで連れていってもらったのだが、コロナ下の為に夫が付きそうことはできなかった。
病室には3人ほどの妊婦さんがベッドに座っており、一人は既にスッスッハーと、ソフロロジー式呼吸をしている。
なるほどなるほど、ああいう感じで呼吸していくわけだ
実を言うとコロナ下で妊婦教室がなかったために、出産の予備知識がYouTube頼りだったのだ。
これは初めてみる他人のお産・・・見られてラッキーと思い、目の前の妊婦さんをばれないように横目で観察。非常に優れた妊婦であった。心の中で彼女にあっぱれと告げた。
そこから数時間、自分にも軽い陣痛がきたのだが、まだまだ時間がかかるとのことで、ごくたまに様子を見られるだけで放置される。眠いのに陣痛が来て眠れないので徹夜1日目・・・
2日目、まだ陣痛の波が来ないということで促進剤を入れられてそこからまた7時間程ボーっと待機・・・
前期破水してしまったから産まざるを得ないが、赤ん坊本人はまだ産まれる気がさらさらないようである。
徹夜しているので眠いのだけど、10分間隔で来る陣痛の為に寝られず、ここで徹夜2日目に突入。
なんだか自分より後に来た人の方が続々と別部屋に去っていくのがうらやましい。
別室に行った妊婦さん達は大体2時間するとすっきりした顔で帰って来るので、おそらくみんな別部屋で産んでいるということが推測される。
自分も早くすっきりしたいのだが、全然移動できる気配がなく徹夜3日目に突入。
ようやく3日目の10時ごろに、別室に移るように言われた時はすでにやり遂げた感で感無量であった。
この際に下剤を打たれ、一度トイレに行く。
別室に移ると、なんだか産まれそうな部屋である。
赤ちゃんがまだ下がってきていないとかで、バランスボールに乗って上下するように指示されるが、これが異常に痛い。
この時すでに、我が人生最大の痛みなのだが、倍以上の痛みに変化・・・
下半身だけに重力がかかって胴が伸びそうな感覚である。
すでに短足なのでこれ以上胴が伸びるのは困る。そして俗に言う鼻からスイカとは全然違う、むしろ鼻は無痛である と痛みと戦いながらもどこか頭のほうは冷静であった。
しかし周囲にいる看護師さんたちは よくある日常の風景を見る眼 で私を見ているので、これは結構やばいですと眼力を込めて看護師さんたちにアピールしたのだが、
「彼女は痛がっているか?いや、まだじゃないか?」と一歩離れたところで観察を続行。
自分なりにそこそこ眼力を込めたつもりだが、イタリア人に比べたら私の表情筋は死んでいたのであろう。
これは人からどう見られるかを勉強してこなかった自分の努力不足であり、出産はここでも勉強になる、と反省した。
私が人知れず反省している中、一人の看護師が私にふと冷静に質問をしてきた。
「うんこがしたい?」Vuoi fare la cacca?
「えっ?」
意外な質問であったので虚を突かれた私はとっさに何のことか理解ができなかったが、ふとピーンときた。
出産時にうんこが出てしまう事はよくある、とユーチューブで学習はしていたのだ。それは分かるが、今それを阻止しようとしているのだろうか?
「うーん、一応トイレに行ってきます。」
どういう事だ。イタリアじゃ出産時にうんこをする事が許されないのか・・?
激痛と疑問をかかえながら、なんとか歩いてトイレに到着・・・いや、この状況でうんこしたら赤ん坊も出てきてしまいそうである。
戻ってきて
「出なかった」
と報告。
数分経って再度
「うんこが出そうな感じがするか?」
どういうことだろうか
やはりイタリアでは出産時にうんこが出ることはだめなんだろうか
軽蔑されても困るので、再度トイレに行く。
「やっぱり出ませんでした」
と報告。
後で分かったのだが、
うんこが出そうな感じがするか?=生まれそう?
という意味だったようだ。しかしながらその聞き方は紛らわしすぎる。
激しい陣痛中にトイレを往復する事を誰も止めなかった点が非常に引っかかるが、出産中にうんこをしてはいけないわけではないと分かり、一安心である。
この後、ようやく質問の意図が理解できた自分は
「うんこが出そうだ(生まれそうだ)」
とドクターに言うと、ドクターも満足げに
「じゃぁそこのベッドに乗ろう!」
とようやく分娩台に乗る事を許された。
次に続きます・・・